ネット上での名誉棄損、プライバシー侵害裁判事例

【裁判例】開示懈怠による法的責任が問題になった事例


プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示義務等を懈怠し、発信者に対する権利行使が不可能になったなどとして、不法行為に基づく損害賠償が問題となりました(東京地判H27.7.28)。
 
本件は、原告が、被告に対し、被告の被承継人であるA株式会社は、原告を債権者、同社を債務者とする発信者情報消去禁止仮処分申立事件において、プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示義務及びその前提となる調査義務を懈怠し、同事件の答弁書中で誤った情報を原告に開示したため、原告の発信者に対する権利行使が不可能になったとして、被告に対して損害賠償を請求した事案です。
 
裁判所は、判断の枠組みとして以下のとおり判示しました。
「原告は、本件不法行為の被侵害利益(権利)として、発信者情報開示請求権、裁判を受ける権利、人格権を主張するが、その趣旨とするところは、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報の開示請求権を行使して本件投稿記事の発信者を特定した上で、当該発信者に対して損害賠償その他の権利を行使することを合理的に期待する利益(以下「本件利益」という。)が侵害された旨をいうものと理解される。
 (中略)本件利益の侵害があったというためには、本件発信者情報の開示請求が認容されること、これを通じて特定された発信者に対する損害賠償請求等の権利行使が実現できることの蓋然性が必要になるというべきである」。
 
結論として、裁判所は、記述の一部について「原告の名誉を毀損する不法行為を構成するものと認められ、原告の発信者情報開示請求は認容され、かつ、これを通じて特定された発信者に対する損害賠償請求権等の権利行使が実現できる蓋然性があった」と認定し、被告の責任を肯定しました。
 
本裁判例は、
(ⅰ)「当該発信者に対して損害賠償その他の権利を行使することを合理的に期待する利益」の存在を前提に、
(ⅱ)同利益の侵害が認められるためには、①本件発信者情報の開示請求が認容されること、②これを通じて特定された発信者に対する損害賠償請求等の権利行使が実現できることの蓋然性が必要になる
という枠組みを示し、結論として同利益の侵害を認めたものとして、同種事案で参考になるものと思われます。


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